大きな謎と可能性を秘めている昆虫。
その仕組みを知り、
未来に役立てるために、
夢中で研究しました。

中松先生の生物学ゼミを選んだ理由を教えてください。

実は私、虫が大嫌いだったんですが、「このまま小学校の先生になってもいいのかな?」と思うようになり、虫嫌いを克服しようと、昆虫について研究する中松先生の生物学ゼミを選びました。また、生物学ゼミの一期生で、現在は皇學館大学の助教をされている澤先生が、「アジア生物学教育協議会第27回隔年会議」でExcellent Poster Presentationを受賞したことを知り、憧れていたことも理由のひとつでした。

国際的な交流ができることも魅力だったんですね。

そうなんです。生物学ゼミでは、ゼミ生が小学校を訪れて昆虫を使った実験や観察を行う「出前授業」をしているのですが、この取り組みは国際的にも注目されています。2年前(令和元年11月)には、中松先生が、南アフリカ共和国のノース・ウエスト大学の学会に招かれ、「出前授業」の内容や授業方法、教育的な効果などについて発表したんです。すごいですよね。
私は3年生のとき、フィリピンから来日された研究者の昆虫に関する研究発表を聞く機会をいただきました。この方と研究分野について語り合えたことは、とても刺激的でした。

中松先生はどんな方ですか?

面倒見がよく、とても親身になって、きめ細かく指導してくださいます。中松先生との出会いは、1年次で受講した「生物学」の授業でした。このとき、教科書だけでなく、暮らしの身近な出来事と学びをうまく結びつけてくださる指導が新鮮で、「なんておもしろい先生なんだ!」と感動したことを今でも覚えています。また、先生は、考え方がとてもユニークなので、研究のみならず生きるうえでもおもしろい着眼点を持つことの大切さを学びました。大げさではなく、先生との出会いで人生が大きく変わったと思います。

竹内さんの研究テーマについて教えてください。

「昆虫の生体防御(免疫)」です。これは、私たち人間にも関わりの深いテーマなんですよ。実は、昆虫と人間の体の仕組みは、とてもよく似ていて、例えば、昆虫の脂肪体は、人間の肝臓と同じような機能を持っています。また、先行研究で、脂肪体はウイルスなどの異物にくっつく性質を持っていることがわかっていて、「脂肪体は感染防御にも関わっているのでは?」と興味を持ったことが研究のきっかけでした。この脂肪体と生体防御(免疫)との関係について研究し、人体の役に立つための糸口を探していました。

「アワヨトウ」を使った実験では、どんなことがわかるのですか?

免疫とは、体内から異物を排除しようとする生物の働きのことですが、「アワヨトウ」の場合、体内に「寄生蜂」の卵が入っても免疫は働きません。その理由は、「寄生蜂」が産卵する時に、毒液とウイルスを「アワヨトウ」の体内に注入し、排除させないようにしているからです。この免疫の研究をベースに、ゼミでは、害を与えるウイルスを探知するレセプターの発見など、昆虫を使ってさまざまな実験を行っていました。

これは、虫嫌いではできない研究ですね。

実験で「アワヨトウ」を使っていた理由は、体のほとんどが脂肪体でできているからです。「アワヨトウ」は蛾の一種で、大きさは5〜6センチ。結構大きいです(笑)。でも今ではすっかり慣れて、なんと、食べたこともあるんですよ!もう完全に克服できました!(笑)
これで、虫嫌いの子どもに、虫の克服方法を教えることができます。挑戦して良かったです。

夢中になって研究に取り組んだ先には、
人間的にも少しだけ大きくなれた
自分がいました。

「出前授業」では、どんなことを学びましたか?

ゼミでの研究成果を生かし、小学校で昆虫を使った実験や観察を行いました。2〜3か月に1回は実施していたと思います。教える内容を考え、教材を作るなど、準備もありますから忙しかったですね。授業当日は、時間配分に気をつけながら、どうしたら子どもたちに興味を持ってもらえるか、ちゃんと教えられるか、大学で学んだことをフル回転させて挑んでいました。終了後、毎回感じるのは、「同じ授業はない」ということ。そして、知識と経験が豊富に必要だということ。教える楽しさと難しさを肌で知った「出前授業」は、教員志望の私には糧になることばかりでした。

ほかに思い出深い出来事はありましたか?

三重県総合博物館(MieMu)で、昆虫について学ぶワークショップを開催したことです。「出前授業」では、教える対象学年が2年生や3年生というように決まっているのですが、ワークショップでは幅広い年齢を考慮して企画しなくてはいけませんでした。好奇心が旺盛な子どもたちが満足できる内容にすることを心がけました。テーマは「カリヤサムライコマユバチの寄生について」。実際に解剖をして、昆虫が寄生する様子を学ぶことを目的に、企画から準備、運営まで、全て自分たちで手掛けました。博物館の担当者の方と直接やり取りをしたので、ビジネスに必要なマナーや礼儀などが身に付き、責任感も生まれるなど、社会勉強にもなりました。

ゼミで学んで成長したと思うのは、どんな点ですか?

ゼミでの学びというのは、はじめから答えがあるわけではありません。試験勉強のように解答を覚えるのではなく、自ら考え、行動して、答えを見つける。こうして得た知識や経験は、教員をめざす人には、とても大きな財産になると思います。
私は、昆虫嫌いを克服したいと飛び込んだ生物学ゼミでしたが、研究はもちろん、さまざまな経験を通して自分の世界がどんどん広がり、ぐんぐん成長していくことを実感することができました。昆虫についての知識が深まり理系への苦手意識がなくなりました。研究や海外の人との交流に欠かせない英語力や、コミュニケーション力も磨くことができました。小学校教員をめざす学生として、ゼミで得たものは本当に大きかったです。

最後に、理想の教員像についてお聞かせください。

小学校教員は、幼い頃からの夢でした。大学のゼミで学んでからは、子どもたちに「この先生おもしろいな。ほかの先生とはちょっと違うな」と思ってもらえる教員をめざすという、具体的な目標ができました。虫に詳しい先生って、おもしろいですよね。これからも、子どもたちに、虫についてたくさん教えてあげたいと思います。
大学は、日々進化していく自分を実感できる場です。昆虫についての研究をキワメ、昆虫を使った実験という得意分野を身に付けたことは、今後の教員人生において大きな支えになると思います。