伊勢志摩百物語~渚・港を歩き憩う~
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- 27 -赤崎竈の地名は行政上残っていません。この地域では、生業の違いにより漁業中心の「浦方」、農業中心の「里方(地じ方かた)」、そして塩焼きを専門とする「竈方」の3タイプに区分されます。漁業権は浦方だけにあり、竈方は海辺の集落ですが製塩専業となっていました。もう塩焼きは行われていませんが、八ヶ竈の呼称はこの地方の歴史を語る証人です。 大方竈に「八ヶ竈八幡神社」という8つの竈集落で祀られているお社があります。大楠が拝殿の屋根に肘枕をしています。塩竈なのに「八幡さん」とは不思議ですが、神社の由来は、この地に移り住んだ平家一族の嫡流である平維盛の後裔が、宇佐八幡宮に擬した像を持ち伝え祀るに至ったとされます。さらにご先祖たちが伊勢国司北畠氏の戦功に尽くした結果、南島所在の25か所の山を受け、浦浜を築き製塩を業なりわいとしたとか。塩焼きに必要な豊かな薪山の権利が保障されたわけです。この時の大切な証文(竈方古文書・三重県指定有形文化財)を収めた宝箱と鍵を輪番で引き継ぐ儀式と弓射行事がおこなわれてきました。 8つの集落は離れており、車でなければ訪れるのは難しいですが、竈跡も残る磯と小さな渚、そして背後に迫る緑の山々。八ヶ竈では、その地一つひとつの歴史・文化と自然が味わえます。(櫻井 治男)■アクセス伊勢市駅前から目的地行くバス(乗換もあり)を選ぶ。車で大方竈まで50分程度。■周辺の見どころ◉大智院(大方竈)◉河村瑞賢公園(東宮)◉かさらぎ池・鵜倉園地(道行竈)◉仙宮神社(河内)…伊勢神宮にゆかりの深い神社。◉ニラハマ展望台(古和浦)…湾を一望。近くに古和一族軍忠碑がある。八ヶ竈集落260260573卍大智院卍澄江寺ふるさと夢トンネル相賀浦トンネル古和浦の湾内に浮かぶ宇佐島弁天拝殿に寄りかかる大楠(八ヶ竈八幡神社)

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