伊勢志摩百物語~渚・港を歩き憩う~
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- 26 - お米・水・塩は神様へのお供えの基本アイテム。伊勢の神宮では、今でも神饌の御塩を調製するため塩焼きが行われています。 シオの神様として知られるのが塩しおつちの土老お翁じ。陸奥国一宮・塩竈神社(宮城県塩竈市)の主祭神として祀られています。日本神話には、潮流や航海を司る神として登場しますが、「チ」という霊的な力を表す古代語が含まれているように、四周を海に囲まれた日本人にとって忘れられない神様といえましょう。 塩竈とは、塩つくりのために濃縮した海水を煮詰める釜のことで、各地に残るシオガマの地名は、その痕跡です。伊勢志摩地方でもかつては、海辺の地域で塩つくりが盛んに行われていたようで、塩田の跡や製塩遺跡が残っています。 先志摩地方の度会郡南伊勢町に「八ヶ竈」と呼ばれる一群の集落があります。相おう賀か・道みち行ゆき・大方・赤崎・小お方がた・栃とちのき木・棚橋・新さら桑くわの各竈です。相賀竈と伊勢志摩にはかつて塩田と塩竈が各所にありました。塩は米・水とともに「命」の源。塩焼きには豊かな森が必要です。平家伝承の伝わる「八はちヶか竈がま」の渚。磯にたたずみ往古に思いをはせてみませんか。道行竈の渚13.小さな渚を支える大きな森   ―「塩竈」集落を行く―(南伊勢町)

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