伊勢志摩百物語~知られざる小さな滝を訪ねて~
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- 25 -は、第11代・垂仁天皇25年に、天照大神を奉戴し宮処を求めて宮川を遡行する倭姫命の前に、真ま奈な胡こ神が現れ、命が土地の名を尋ねると、「大河乃瀧原乃国」と答え、その地を献上し宮を造営したとの伝承が登場します。名前を明かすことは相手への帰依を、「大瀧の瀧原」と言挙げすることは麗しい土地の「魂ふり」「国誉め」儀礼の意図がうかがわれます。 幕末から明治にかけて活躍した神宮学者の御巫清直(1812~94)が神宮の古伝を研究した『太神宮本記帰正鈔』には、瀧原を流れる5ブロックの河川の瀧、48か所の名前が記されています。(1)は大内山川(大川)の岩間のそれで、①御調瀧(大瀧)・②好瀧・③吹瀧・④長瀧・⑤出合瀧。(2)瀧原宮の東山より宮域南方を西流し、御手洗川(頓登川)となる川の⑥太一御瀧・⑦小女瀧・⑧隠瀧・⑨大坂瀧・⑩布引瀧・⑪銚子瀧・⑫紅葉瀧・⑬身毛下瀧・⑭岩瀬瀧。(3)宮域の南、岩内村の東山より大川に流れる川の⑮尾ハフシ瀧・⑯鏡瀧・⑰谷合瀧・⑱善口瀧・⑲山見瀧・⑳駒瀧・21上田ヶ瀧・22尾崎瀧・23中山瀧・24御影瀧・25神船瀧、(4)宮域の北方「里村」の東山から西流する川沿いの、26祓瀧・27杉瀧・28船瀧・29柳瀧・30八王子瀧・31烏瀧・32落合瀧・33清水瀧・34クヽリ瀧・35神楽瀧・36御休瀧・37下馬瀧・38耀瀧・39岩船瀧・40二ノ瀧・41上ノ瀧・42下ノ瀧、そして(5)大内山川左岸より東流する川に沿った43注連附瀧・44御供瀧・45向ノ瀧・46二ノ瀧・47三ノ瀧です。一つ足りませんが、他の記録を見ますと、御神前を流れる48「御前瀧」となります。 ところで、赤目48滝(三重県名張市)、宇津江48滝(岐阜県高山市)など48を■アクセス公共機関JR紀勢線「滝原駅」より徒歩20分。三重交通南紀特急「瀧原宮前」下車すぐ。紀勢自動車道「大宮大台IC」より約10分。■周辺の見どころ◉大滝峡(大紀町瀧原)…水戸神社の7月上旬「おんべ祭」(鮎占神事)では川中の岩壺に鮎を投入し年の吉凶が占われる。◉大皇神社(大紀町崎)…木地師の祖とされる「惟喬親王」を奉斎。大滝峡の水戸神社瀧原宮参道数えあげた滝が各地にあります。数字は、法蔵菩薩の48願に由来するともいわれますが、将棋や相撲の技法、さらに江戸時代の黄草紙『傾城買四十八手』(山東京伝)のように48は私たちの文化に染みついた「記号」の一種かもしれません。        (櫻井 治男 SAKURAI Haruo)423831747大台大宮IC三瀬谷駅滝原駅皇大神宮別宮瀧原宮

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