伊勢志摩百物語~渚・港を歩き憩う~
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- 25 -戸時代には奈屋浦という集落が形成されていたことが分かります。ただどちらの文献にも荒磯であり船をつなぐことが難しいと記されており、漁村としてはなかなか栄えることがなかったようです。 港としての環境が整い始めたのは戦後のことで、昭和50年代以降は漁港の整備と揚繰網漁業の導入によって県下一の水揚げを誇るほどに成長しました。これにより、荒天にも強い釣り場として釣り人のひそかな穴場にもなっています。 漁港すぐ側の恵比寿神社では毎年正月に獅子舞が奉納されており、これは町指定の文化財にもなっています。その舞は『南島町史』には「神話を原始的な降魔の儀式としたものと解され近在にない異色とされている」とあり、一見の価値があります。昔は安全操業や大漁祈願のための夜ごもりにも用いられ、漁港と神社の関係の深さを物語っています。夜ごもりは現在は行われていないようですが、関係性は損なわれることなく平成28年には寄進によって綺麗な拝殿が造られています。 この場所のエピソードとして忘れられないものに照泉寺境内にある支毘大命神の供養碑にまつわる物語があります。慶応4年(1868)に凶作によって村民の生活が困窮していた時に、鮪の大群の来遊があり、村民の生活を潤したという話です。この大漁が明治13年(1880)もあったので、これらを感謝して供養碑が建てられました。この出来事があったからこそ、今も奈屋浦という場所が残り、漁港が発展して■アクセス伊勢自動車道・玉城ICより県道65号、県道22号を南下。国道260号を西へ、オートザムの前を左折。■周辺の見どころ◉恵比寿神社…漁港すぐそばにある神社です。正月に奉納される獅子舞が町指定文化財。7月中旬には天王祭があり、御船のねりこみや花火大会が行われます。 ◉照泉寺…本尊に阿弥陀如来をまつる浄土宗寺院。村の発展と関係が深い支毘大命神の供養碑がある。いくことが出来たのでしょう。(田井 健治)仙宮神社クリーンセンターなんとうクリーンセンターなんとうニューまつおかにえうらトンネル奈屋浦鵜倉園地鵜倉園地にえうらトンネル奈屋浦漁港260260建て替えられたばかりの恵比寿神社拝殿

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