伊勢志摩百物語~知られざる小さな滝を訪ねて~
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- 7 -37彦ヶ滝朝熊駅者、雨を、此に祈るとぞ。又、此の瀑に栖すめる大蛇の書翰と云ふ物を、孫まご福ふく氏蔵せり。緘かん封ぷう、甚はなはだ厳にして、敢て、人に示さずと云ふ」とあります。旱かん魃ばつの時に祈りがささげられた人々の生活に直結した特別な場所であったことを伺い知ることが出来ます。また大蛇の存在が共通してありますが、特別で神聖な場所であったからこそ安易に近づかせない為に、この存在が作られたのでしょうか。 この様に考える理由ですが、彦ヶ滝がある場所は現在神宮の管理する神域で、一般の人は立ち入ることが出来ません。ですので、その滝の姿を直接に望めません。そのような状況が、昔の人々もその神聖な場所を保持する為の説話を作ったのではないかと想像をたくましくさせます。 さて、彦ヶ滝を直接に見ることは出来ませんが、この一帯の山々に朝熊山があります。主たる登山道ではありませんが、朝熊駅を越えた二瀬橋から北斜面を登るコースには、道すがら小さな滝が点在しています。また最も有名な朝熊岳道の中腹には朝熊山神社という小さな社もあり、当時の信仰を伺い知ることが出来ます。そんな場面から彦ヶ滝の情景を思い浮かべることも面白いことかもしれないです。(本多 麗 HONDA Rei)■周辺の見どころ◉五十鈴公園…元の内宮工作場とされており、平成27年4月1日より県営都市公園としてはじまった。◉三重交通Gスポーツの杜 伊勢(三重県営総合競技場)…昭和43年より競技場として使われている。◉西さい行ぎょう谷たに…平安時代末頃の歌人西行が晩年を過ごしたと推定されている地。朝熊山神社朝熊岳登山道入口二十二町目より伊勢湾を望む

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