伊勢志摩百物語~知られざる小さな滝を訪ねて~
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- 27 -民俗学の父といわれる柳田國男の『山宮考』によれば、山と里とを行き来する神様とされ、稲作で用いる水は、この神様の恵みであって、春の2月には田の神様になり、その収穫がすむと11月の満月の夜に、再び山に帰って山の神となるのだと信じられていたことが、その起源とされます。山の神は先祖の霊体であるとされ、古代では人の亡くなった後の御霊は、山へ行くと説かれます。 鴨神社を下り、谷底道に出ると釜ヶ谷という大きな杉の木立が迎えます。この谷を少し登ると山腹の洞穴から清水が湧き出ている洞くつがあり、『玉城町史』には、ここに山の神が鎮まっておられたとされているところがあります。その場所はこの洞くつの傍らの石積みされた平地とされ、神聖な霊所と同時に水の恵みを祈った神事の場でもありました。洞くつから流れ下る清水の川底には、扁平な石が多く転がっています。それは、この周辺の古墳にもたくさん建てられていて、古代の人が洞穴を水霊の依り代として、山の神の祭りを行ってきたことをあらわす遺物であると考えられています。 山のなかの滝と聞くと、訪れることが大変なイメージを持たれるかもしれませんが、歩道・足場ともに整備されていますので安心です。的山を歩きながら、自然の恵みのなかで山の神様のあしあとをたどってみてはいかがでしょうか。(掛川 拓海 KAKEGAWA Takumi)■アクセス伊勢自動車道玉城I.C.より約10分。■周辺の見どころ◉鴨神社…神宮摂社。倭姫命が祝い定めたと伝わる。御祭神は、大水上の御児、石己呂和居命・御前神を祀る。◉氷室洞くつ…泉が湧き出る岩窟。斎王が使う氷を貯蔵していたと伝わる。玉城IC65山神の滝的山山頂から見た風景鴨神社氷室洞くつ

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