伊勢志摩百物語~名木・奇樹を訪ねる~
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- 10 - お屋根桜は旧豊とよ宮みや崎ざき文庫の敷地内に生える桜です。 豊宮崎とは豊受大神宮(外宮)の宮山の先にあることから付けられた地名で、文庫の跡地は外宮表参道から歩いて5分ほどのところに位置しています。文庫は慶安元年(1648)、この地に開かれました。主唱者は、外宮権禰宜の出で口ぐち延のぶ佳よしをはじめ数名で、神宮祠し官かんや学者、地域の有力者などの協力のもと設立されました。文庫設立の目的について延佳は、「神書、古記、和漢の書籍をあつめ、万代に残し、且は所の人にも学問を進めんためなり」(『伊勢太神宮神異記』)と述べており、図書館であると同時に学校でもありました。もともと神宮には神しん典てんや記録を収蔵・保存する施設がありましたが、それらは一般に公開されるものではありませんでした。延佳は、内外の典籍を収集し、外宮祠官や師弟のみならず好学の人々等が利用できる学問所にもなる文庫の創立を図りました。花香る豊宮崎の宵、古くからの学問所跡に残る珍しい桜。文庫設立と共に植えられた姿は今も春に私たちを誘います。5.お屋根桜 (伊勢市岡本)満開のお屋根桜

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